西日本最大の原生林を歩く
国の伝統的建造物保存地区に指定された、日本の原風景が残る美山町のかやぶきの里集落奥、入山規制されている芦生の原生林をネイチャーガイドがご案内致します。
上谷・杉尾峠コース:上谷は、由良川の源といえる谷で、現在「原生林」の姿をよく留めていて、由良川源流域「芦生の森」の魅力を象徴している。
このコースを歩く場合には特に先を急ぐことなく、ゆったりと周りの景色を眺め、谷のせせらぎの音や鳥の声に耳を傾け、森の香りを楽しみ、足裏に伝わる森の土の感触を確かめながら歩いて下さい。どんな季節に歩いてみても、芦生の森はあなたに感動を与えてくれます。
芦生演習林は京都大学が1921(大正10)年に、旧知井村の九ヵ字(南、北、中、江和、田歌、芦生、河内谷、白石、佐々里)共有林の一部を、学術研究および実地演習に使用するために、借り受けたものである。この地方は、暖帯広葉樹林から温帯落葉広葉樹林帯へ移行する地域にあたり、また気候的には裏日本の影響を強くうけて、冬期の積雪量は比較的多い。 本演習林は主に、スギと落葉広葉樹の天然林で、植物の種類は特に豊富、これまでに大本植物243種、草本植物532種、シダ85種が確認されている。海抜高は360~960mで、地形は全般的に急峻であるが、標高の高い北東部は、傾斜は比較的緩やかである。地質は秩父古生層に属し、基岩は粘板岩、砂岩、硅岩が多く、土壌はやや粘質で、腐植に富み、表土の厚い褐色森林土であるが、標高の高い尾根付近にはしばしばポトゾルがみられる。年平均降水量は2514ミリ、年平均気温は13.1度で、冬期の積雪量は、事務所(海抜高360m)付近で1~2m、標高の高いところでは3mを超すことがある。 天然林の植生は、海抜高約600mまでは、ウラジロガシやコナラを主とした広葉樹林で、これより標高の高いところは、ブナやミズナラが多くなる。クリやカエデ類、シダ類は全体に分布し、谷筋にはトチノキ、カツラ、サワグルミなどが多い。また約600mより低い尾根には、ヒノキ、ゴヨウマツ、モミ、ツガがみられ、これより標高の高い尾根にはスギが多い。この地域のスギは❝アシウスギ❞と呼ばれる裏日本型のスギで、下枝が枯れあらがないで下垂して伏条になり、発根して更新している。芦生演習林は、天然林が多く、森林に生息する大型動物や鳥類の種類が比較的豊富である。しかし、この地域では、ツキノワグマによるスギの樹幹剥皮の被害が多い。この被害は林道網の発達や保育作業面積の拡大などによって、最近、減少傾向にあると考えられるが、スギ造林木の雪害とともに、森林の更新上大きな問題の一つとなっている。
京都大学「演習林概要」より